
業務でドローンを運用すると、建物の陰、高所の点検、長い飛行経路などが原因で目視外飛行が避けられない場面に出会います。
目視外飛行は、航空法で国土交通大臣の承認が必要な「特定飛行」の一つに指定されています。
目視外飛行に該当するかの判断基準は、飛行レベル・カテゴリー・空域(DIDなど)・補助者の有無・操縦者の資格の5つです。
本記事では2026年10月時点の国土交通省の公開資料をもとに、ドローンの目視外飛行について、許可・承認の要否から、DIPS2.0での申請、飛行計画通報、飛行日誌までをまとめました。
目視外飛行の要点

目視外飛行の要点は、以下の6点になります。
- 目視外飛行は、特定飛行10類型のうち「飛行の方法」6類型の1つです。
- 補助者を配置する昼間の目視外飛行は、包括申請(航空局標準マニュアル02)で申請できます。
- 補助者を配置しない目視外飛行は、場所を特定した申請が必須です。包括申請は使えません。
- レベル3.5は、機上カメラと地上モニターで第三者の不在を確認する方式です。技能証明と第三者賠償責任保険が前提になります。
- 民間資格は、2025年12月18日から許可・承認申請の手続き省略に使えなくなりました。
- 特定飛行は、飛行前の飛行計画通報と、飛行日誌の作成が義務です。
目視外飛行が特定飛行に当たる理由と定義

航空法では、無人航空機は、昼間(日の出から日没まで)に操縦者が機体とその周囲を目視で常に確認しながら飛行させることが原則です※1。
目視の範囲を離れてしまうと第三者や他の航空機の接近に気づくのが遅れて危険なので、国土交通省は、事前の承認を受けた場合に限り目視外飛行を認めています。
国土交通省のガイドラインは、FPV(First Person’s View)やモニター監視も、目視外飛行の例に挙げています※1。
肉眼で常時監視できない目視外飛行にあたる例は以下です。
- FPVゴーグルを使った操縦
- 送信機やタブレットの映像を見ながらの操縦
- 建物・樹木・地形で機体が隠れる飛行経路
- 操縦者が機体の姿勢を肉眼で判別できない距離での飛行
またガイドラインでは、補助者を配置して周囲の監視を任せて安全確認する方法もに有効です※1。
補助者を配置する場合と配置しない場合では申請方式や要件が異なるので、それについては後ほど解説します。
FPVについては、詳しくは以下の記事を参照してください。
特定飛行10類型の全体像
特定飛行は、飛行の空域4類型と飛行の方法6類型の計10類型です※1※3。
空域に関する4類型は国土交通大臣の「許可」、飛行方法に関する6類型は「承認」が必要です。
複数に該当する飛行では、該当する類型ごとに許可・承認を受けます。
| 区分 | 類型 | 手続き |
|---|---|---|
| 飛行の空域 | 空港等の周辺の空域 | 許可 |
| 緊急用務空域 | ||
| 地表又は水面から150m以上の空域 | ||
| 人又は家屋の密集している地域(DID)の上空 | ||
| 飛行の方法 | 夜間飛行(日没から日出まで) | 承認 |
| 目視外飛行 | ||
| 人又は物件との距離30m未満の飛行 | ||
| 催し場所上空の飛行 | ||
| 危険物の輸送 | ||
| 物件投下 |
第三者の上空を飛行するかどうかは、10類型の区分ではなく、カテゴリー(立入管理措置の有無)で決まります※2。
緊急用務空域は、他の空域の許可を得ていても飛行できません※3。
目視外飛行と自動飛行の違い
目視外飛行は「肉眼で常時監視しているか」、一方自動飛行は「機体が操縦を自動で行うか」が概要になり、まったく異なります。
目視外飛行と自動飛行の組み合わせは、次の3通りです。
- 目視内×手動操縦:レベル1
- 目視内×自動飛行:レベル2。ウェイポイント飛行でも、肉眼で常時監視していれば目視内です。
- 目視外×自動飛行:レベル3・3.5・4に区分されます※7。
自動帰還の設定は、通信断が起きたときの帰還ルートが第三者の上空を横切らないよう、飛行経路と立入管理区画に合わせて決めます。
飛行レベル1〜4とカテゴリーI〜IIIの違い

飛行レベルは運航形態の段階、カテゴリーは許可・承認の要否を決める区分です。
この2つを理解することで、自社の案件に必要な手続きを判断できます。
| レベル | 飛行形態 | 機体認証・技能証明 | 許可・承認 |
|---|---|---|---|
| 1・2 | 目視内での操縦・自律飛行 | — | 特定飛行に該当する場合のみ必要 |
| 3 | 無人地帯での補助者を配置しない目視外飛行(立入管理措置が必要) | 第一種/第二種機体認証+一等/二等技能証明 | 認証・技能証明がある場合は原則、飛行ごとの許可・承認は不要。これ以外は必要 |
| 3.5 | レベル3のうち、機上カメラ等で立入管理措置を行う形態※4 | 技能証明+第三者賠償責任保険 | 本省航空局への事前相談後、DIPS2.0で申請※2 |
| 4 | 有人地帯での補助者を配置しない目視外飛行(立入管理措置なし) | 第一種機体認証+一等技能証明 | 飛行ごとの許可・承認が必要 |
レベル1〜4の整理は内閣府の公開資料にもとづきます※7。カテゴリーの定義は国土交通省の資料のとおりです※2。
| カテゴリー | 定義 |
|---|---|
| I | 特定飛行に該当しない飛行。許可・承認は不要 |
| II | 特定飛行のうち、飛行経路下に立入管理措置を講じて行う飛行(第三者の上空を飛行しない) |
| III | 特定飛行のうち、立入管理措置を講じずに行う飛行(第三者の上空で特定飛行を行う) |
カテゴリーIIのうち、DID上空・夜間・目視外・第三者から30m未満の飛行(総重量25kg未満)は、条件を満たすと許可・承認が不要になります。
条件は、技能証明を持つ操縦者が機体認証を受けた機体を飛行させること、立入管理措置を講じること、飛行マニュアルの作成です。
空港等周辺、150m以上、催し場所上空、危険物輸送、物件投下、総重量25kg以上の飛行は、個別の許可・承認が必要です※2。
補助者あり・補助者なしの目視外飛行とレベル3.5の要件

補助者を配置する目視外飛行
補助者は、目視外飛行で次の4つの役割を担います※8。
- 第三者の立入管理
- 有人機などの監視
- 自機の監視
- 自機周辺の気象状況の監視
配置は、飛行経路の全区間を見通せる位置に決めます。「停止」「帰還」「中止」の合図は、飛行前のブリーフィングで統一します。
補助者を配置しない目視外飛行(レベル3・3.5)
補助者の4役割を機上装置と地上設備で置き換えるのが、補助者を配置しない目視外飛行です。レベル3.5は、従来のレベル3で必要だった補助者・看板の配置と道路横断前の一時停止を不要にした形態で、2023年12月8日に国土交通省が初の承認を行いました※4※5。
| 項目 | レベル3 | レベル3.5 |
|---|---|---|
| 立入管理措置 | 補助者・看板の配置、道路横断前の一時停止 | 機上カメラと地上モニターで、経路直下と周辺に第三者がいないことを確認。補助者・看板・一時停止は不要 |
| 操縦者 | 技能証明がない場合は、飛行ごとの許可・承認が必要 | 技能証明(目視内飛行の限定を解除したもの)が必要 |
| 保険 | — | 第三者賠償責任保険への加入が必要 |
| 申請方式 | 場所を特定した申請 | 場所を特定した申請。本省航空局の事前相談窓口へ先に相談 |
レベル3.5の前提は、次の3要件です※4。
- 機上カメラと地上のモニター等で、進行方向の経路直下と周辺に第三者の立入りがないことを、事前に確認できること
- 移動車両との接触や交通障害に備え、補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していること
- 操縦者が、目視内飛行の限定を解除した無人航空機操縦者技能証明を保有していること
作成する資料は5点です※4。申請時の提出は原則不要ですが、国土交通省航空局から求められたときに提出します。
- 想定リスクを踏まえた運航条件の資料
- 機能・性能と飛行形態に応じた追加基準への適合状況の資料
- 操縦者の飛行実績・訓練実績の資料
- 飛行範囲と、外周から製造者保証の落下距離までを示した立入管理区画の地図
- 機体の初期故障期間を超えた飛行実績の資料
申請の流れは、本省航空局への事前相談、運航概要宣言書の航空局管理番号の発行、DIPS2.0での電子申請の順です※2。予定経路で他の航空機や無人航空機をカメラ等で常時確認できない場合は、飛行日の1開庁日前までに、管轄の地方航空局へ「飛行内容通知書」を提出します。航空機の運航者への飛行予定の周知も必要です※2。
レベル4との違い
レベル4は、第三者の上空を含む有人地帯での目視外飛行です。第一種機体認証を受けた機体、一等技能証明を持つ操縦者、飛行ごとの許可・承認の3点が必要です※7。レベル3.5は第三者の不在を確認して飛ぶ形態で、第三者上空は飛行しません。
包括申請と場所を特定した申請の使い分け

包括申請は、飛行場所を特定せずに申請する方式です。
航空局標準マニュアル02を使えるのは、DID上空の飛行、夜間飛行、目視外飛行、30m未満の飛行、危険物輸送、物件投下に限られます※2。
次の表で、案件ごとの申請方式を判断してください。
| 飛行内容 | 申請方式 |
|---|---|
| 昼間・補助者を配置する目視外飛行 | 包括申請が使える |
| DID上空の昼間・補助者を配置する目視外飛行 | 包括申請が使える |
| 補助者を配置しない目視外飛行(レベル3・3.5) | 場所を特定 |
| 夜間における目視外飛行 | 場所を特定 |
| DID上空の夜間飛行 | 場所を特定 |
| DID上空の夜間における目視外飛行 | 場所と日時を特定 |
| 空港等周辺、地表又は水面から150m以上の飛行 | 場所を特定 |
| 趣味・研究開発目的の飛行 | 場所を特定 |
| 催し場所上空の飛行 | 場所と日時を特定 |
包括申請を含む各飛行方法の承認を取得済みの場合も、上記の飛行は個別の申請手続きが必要です※2。
反復する通常業務を包括申請でカバーし、立入管理・経路・緊急着陸地点を現場ごとに設計する案件を、場所を特定した申請で作り込む二段構えが実務では安心です。
経路図と立入管理区画を一式の資料にまとめると、施設管理者や発注者への説明資料としても使えます。
DID上空で目視外飛行を行う場合の判断

DIDは、航空法上による「人又は家屋の密集している地域」のことで、国勢調査の結果をもとに5年ごとに設定されます※3。
飛行予定地が該当するかは、国土地理院の地理院地図とe-StatのjSTAT MAPで確認できるので、飛行前には離着陸地点だけでなく飛行経路全体を確認しましょう。
2026年6月30日の国土交通省告示により、都市計画法の工業専用地域内の区域はDID対象地域から除外されました※2※3。
DIDを含む飛行経路であっても該当する区域についてDIDの許可を申請しない場合は、工業専用地域に該当することを確認し、経路図や備考欄にその旨を記載します。※2。
2026年9月29日には、補助者を配置しない目視外飛行について、やむを得ずDID上空を飛行経路に含める場合の審査要領が改正されました※2。
該当する飛行を計画する場合は、最新の審査要領とレベル3.5飛行の事例を確認しましょう。
DID上空は、目視外の承認に加えて空域の許可も対象です。
敷地境界が分かりやすい工場や、立ち入りを制限できる建設現場などは、管理体制を組みやすい場所と言えます。
夜間飛行にならないよう、日没時刻を調べて日が暮れる前に飛行を終える計画を立てることが重要です※1。
目視外飛行に必要な資格・機体・保険

目視外飛行に必要な資格の要否は、運航形態ごとに異なります。
民間資格は、2025年12月18日の審査要領改正で、「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証」と「ホームページ掲載無人航空機」の運用が廃止されたため、許可・承認申請の手続き省略に使えなくなりました※2。
保険においては、2025年10月1日以降の新規申請により、総重量25kg以上の機体に第三者賠償責任保険の加入が必要となります※2。
コストを抑えるには、助者を確保できる案件が中心なら、資格取得より包括申請の整備を優先しましょう。
補助者なしの飛行を反復するなら、二等技能証明の限定変更とレベル3.5の準備に投資します。
取得費用と期間は登録講習機関ごとに異なるため、事前に見積もりを取るのがおすすめです。
DIPS2.0での許可・承認申請の流れ

国土交通省は、飛行許可・承認申請を原則DIPS2.0(ドローン情報基盤システム)で行うよう案内しています※2。
申請から補正のやり取り、許可書のダウンロードまで、DIPS2.0内で完結します。
- 機体登録:登録記号の発行を受けます。申請の前提です。
- ログイン:機体登録で取得したIDでログインします。法人は「企業・団体」を選んでアカウントを開設します。
- 申請書の作成・提出:飛行開始予定日の10開庁日前(土日祝を除く)までに提出します。補正に備え、3〜4週間前の提出が目安です。
- 申請先の確認:空港等周辺、緊急用務空域、150m以上は東京・関西の空港事務所長宛てです。それ以外は東京航空局長または大阪航空局長宛てです。
- 補正対応と許可書の受領:電子許可書をDIPS2.0から取得します。
入力の前に、飛行概要(目的・場所・期間・時間帯・最大高度・経路)、機体情報(フェイルセーフ・外部監視の手段)、操縦者の飛行経歴、安全対策(立入管理・連絡体制・緊急時手順)を紙に整理すると、矛盾が減ります。
航空局標準マニュアルは、団体名と名称を記載すれば添付書類に代えられます※2。記載例と経路図の作成例は、国土交通省が公開しています(申請書の記載例、飛行経路図の作成例)。
飛行計画通報・飛行日誌・事故報告・罰則

許可・承認を得た後の義務は、次のとおりです。
| 義務 | 内容 | 違反時の罰則 |
|---|---|---|
| 飛行計画の通報 | 特定飛行の前に、日時・経路・高度をDIPS2.0で通報。費用は無料で、スマートフォンやタブレットからも利用可※1 | 30万円以下の罰金(航空法第157条の10)※6 |
| 飛行日誌の作成 | 飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の3種を記載※9 | 10万円以下の罰金(航空法第157条の11)※10 |
| 事故等の報告 | 人の死傷、物件の損壊、航空機との衝突・接触とそのおそれ、機体不具合による制御不能、飛行中の発火が対象※1 | 報告先は許可・承認を受けた官署または飛行経路を管轄する官署 |
許可・承認を受けずに特定飛行を行った場合は、拘禁刑または罰金が科されます※2。
行政対応や取引先のコンプライアンス審査にも影響するため、条件逸脱を防ぐ社内ルールが重要です。
事務負担は、通報の入力項目をテンプレート化し、変更時の更新担当を決めると減らせます。
特定飛行以外の飛行でも、国土交通省は通報と飛行日誌の記載を推奨しています※1。
目視外飛行の最終チェックリスト

今回は、目視外飛行とはいかなるものなのか、必要な許可や条件、手続きについてご紹介しました。
最後に、目視外飛行を行うにあたっての最終チェックリストを以下にまとめます。
- 空域・方法の確認:飛行経路全体で、DID、空港等周辺、150m以上、夜間に該当しないかを確認します。
- 補助者の要否:配置できる場合は包括申請、配置できない場合はレベル3・3.5の個別申請を選びます。
- レベル3.5の可否:機上カメラと地上モニターで第三者の不在を確認でき、技能証明と保険がそろうかを確認します。
- 申請:飛行開始予定日の3〜4週間前までに、DIPS2.0で提出します。
- 運用:飛行前の計画通報、当日の条件確認、飛行日誌の記録を、毎回のルーチンにします。
目視外飛行を安全に実施するため、必要な許可・承認や飛行条件を確認し、最新のルールに従い運用しましょう。
注記・参考情報(国土交通省ほか)
制度は改正が続いています。申請前に、国土交通省の最新の公開情報を確認してください。
- 国土交通省「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」(令和8年9月29日版):https://www.mlit.go.jp/common/001303818.pdf
- 国土交通省「無人航空機の飛行許可・承認手続」:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html
- 国土交通省「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」:https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html
- 国土交通省「無人航空機目視外飛行(レベル3飛行)の事業化に向けた改革」(レベル3.5の要件):https://www.mlit.go.jp/koku/content/001715059.pdf
- 国土交通省 報道発表(令和5年12月8日)「本邦初の無人航空機のレベル3.5飛行について飛行の承認を行いました」:https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001711645.pdf
- 国土交通省「飛行計画の通報・飛行日誌の作成」:https://www.mlit.go.jp/koku/operation.html
- 内閣府 地方創生推進事務局 資料「無人航空機の飛行レベル」(国土交通省作成):https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/r8/pdf/260423_shiryou_2_4.pdf
- LOGISTICS TODAY「国交・経産省、ドローン目視外飛行の要件設定」(2018年3月29日、補助者の4役割):https://www.logi-today.com/313365
- 福井県 配布資料(飛行日誌の3種の記録):https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/021033/mujinkoukuuki/mujinkoukuuki_d/fil/doro-nchirashi.pdf
- ASCII.jp「ドローンの飛行記録」(飛行日誌の罰則、国土交通省参照の記事):https://ascii.jp/elem/000/004/224/4224975/
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