アマチュア無線3級と4級の違いは? どちらを目指すべきか。

本記事では、アマチュア無線「4級」と「3級」の違いを解説します。
初めてアマチュア無線の資格を取る方のために、どちらの資格を目指したらよいかも提案します。アマチュア無線に入門する参考となりましたら幸いです。
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アマチュア無線技士とは?
「アマチュア無線」(”ハム”とも呼ばれる)は、趣味として楽しむ目的で「アマチュア無線機」を操作するために必要な資格です。
正式には「第4級アマチュア無線技士」と呼ばれる国家資格で、第1級から第4級までのグレードに分かれています。
第1級(1アマ)と第2級(2アマ)が上級資格、第3級(3アマ)と第4級(4アマ)が初級資格とされます。
アマチュア無線の資格でできること
例えば、第4級の場合は以下の活動ができるようになります。
- 国内35万近い数のアマチュア局との交信の第一歩
- 「5.8GHz」の電波を利用した高度なドローン操縦
- 災害時の通信協力
また、アマチュア無線の資格は級にかかわらず一生涯有効です。
年間の維持費や更新料も不要です。
もし忙しくて活動ができなくなっても、資格がある限り復帰することができます。実際にカムバックされる方も多く、アマチュア無線雑誌『CQハムラジオ』ではカムバック・ハム特集が毎年組まれております。
アマチュア無線の資格は、一生続けられる趣味へのパスポートといえます。
3級と4級のどちらを取得すべきか
アマチュア無線の資格を初めて取る場合は、「3級」または「4級」を選べます。
どちらを選ぶかは、「無線に何を求めるか」で決まります。
手軽に始めてみたいなら「4級」
なるべく手軽に始めるなら、4級の取得がベストです。
資格試験のレベルも高くありません。中学校の理科の知識があれば、十分合格が狙えます。
また、講習会に参加すれば最短2日で取得できます。
始めるハードルが低いため、多くの人が4級から無線を楽しんでいます。
2023年3月31日現在のアマチュア無線技士の有資格者は約356万人ですが、その9割弱は4級アマチュア無線技士の資格者です。

画像引用元: hamlife.jp
もし自宅で無線機を設置できなくても、地域の無線クラブへの参加など、4級でも充分に無線の醍醐味が味わえます。
モールス通信を行いたい人は「3級」
もしCW(モールス通信)に興味がある場合は、迷わず3級を目指しましょう。
〈CW(モールス通信)とは〉
100年以上前から使われている、歴史ある通信の方法です。
「電鍵」を押したり離したりすることで、電波をオン・オフして「モールス符号」を送り、メッセージを伝えます。
モールス符号は、「トン」=短い音と「ツー」=長い音の2種類だけで、アルファベットや仮名を表現します。
例えば「SOS」は、モールス符号だと「トントントン(S) ツー ツーツー (O) トントントン(S)」となります。
最初は覚えるのが大変ですが、これは頑張って覚えましょう!
3級と4級の基本的な違い
初級資格である3級と4級は、以下の点で違いがあります。
・送信出力
・運用できる周波数
・モールス通信(CW)の可否
送信出力の限度
4級 | 3級 | |
送信出力 | HF 10W以下 VHF/UHF 20W以下 |
HF/VHF/UHF 50 W以下 |
特徴 | 近場なら問題なく利用可能 日本国中との安定通信には出力不足と感じる場面も |
遠距離の局とも交信の可能性あり |
出力が大きくなるほど、 電波を飛ばす強さが強くなります。
アンテナや電源・法令上の配慮が必要になりますが、より遠くの局と交信できる確率が高くなります。
運用可能な周波数の範囲
アマチュア無線で使える電波の範囲は決まっています。これを周波数帯といいます。
4級と3級では、利用できる周波数帯の種類が少し違います。
※2025年1月現在
周波数帯 | 周波数範囲 | 最大空中線電力(W) | |
4級 | 3級 | ||
135kHz帯 | 135.7~137.8kHz | 10 | 50 |
475kHz帯 | 472~479kHz | 10 | |
1.9MHz帯 | 1800~1875kHz | 10 | |
1907.5~1912.5kHz | |||
3.5MHz帯 | 3500~3580kHz | 10 | |
3599~3612kHz | |||
3662~3687kHz | |||
3.8MHz帯 | 3702~3716kHz | ||
3745~3770kHz | |||
3791~3805kHz | |||
7MHz帯 | 7000~7200kHz | ||
10MHz帯 | 10100~10150kHz | - | - |
14MHz帯 | 14000~14350kHz | - | - |
18MHz帯 | 18068~18168kHz | - | 50 |
21MHz帯 | 21000~21450kHz | 10 | |
24MHz帯 | 24890~24990kHz | ||
28MHz帯 | 28~29.7MHz | ||
50MHz帯 | 50~54MHz | 20 | |
144MHz帯 | 144~146MHz | ||
430MHz帯 | 430~440MHz | ||
1200MHz帯 | 1260~1300MHz | 10 *4 | 10 *5 |
2400MHz帯 | 2400~2450MHz | 2 *4 | 2 *5 |
5600MHz帯 | 5650~5850MHz | 2 | 2 |
10.1GHz帯 | 10~10.25GHz | ||
10.4GHz帯 | 10.45~10.5GHz | ||
24GHz帯 | 24~24.05GHz | ||
47GHz帯 | 47~47.2GHz | 0.2 | 0.2 |
77GHz帯 | 77.5~78GHz | ||
134GHz帯 | 134~136GHz | ||
248GHz帯 | 248~250GHz | ||
4630kHz | 4630kHz *7 | - | 50 |
(*1) 月面反射通信(EME)をおこなう場合は20W
表の引用元:https://www.jarl.org/Japanese/6_Hajimeyo/shikaku.htm
3級では、4級で使える周波数帯のすべてに加えて「18MHz帯」が利用できます。
18MHz帯は、短波帯(HF)の一つで、国際バンドです。ちなみにHF帯は「電離層反射」を活用して通信するので、天候・太陽活動・時間帯によってコンディションが刻々と変化します。その偶然も楽しみのひとつです。
モールス通信の可否
4級では、モールス通信(CW)は使用できません。
3級ではモールス通信が許可されており、電鍵を使った交信が可能です。
CWでの交信は、世界各国共通ですので、外国語が話せなくても海外局と交信できます。
3級と4級の受験に関する違い
3級と4級は、アマチュア無線の資格を持っていない人もいきなり取得可能です。
ただし、3級のほうが試験に合格するハードルは高いです。
講習会の形式が限られるため、自分で計画的に勉強を進める必要が出てきます。
認定試験の問題数と内容
4級と3級の試験では、問題数や出題の分野に少し違いがあります。
\ | 4級 | 3級 |
試験時間 | 60分 | 70分 |
出題形式 | マークシート方式(四肢択一) | |
試験科目 | ①無線工学 ②法規 | |
問題数 | 無線工学(12問)/ 法規(12問) | 無線工学(14問)/ 法規(16問) |
合格基準 | 60点満点中40点以上(無線工学) | 70点満点中45点以上(無線工学) |
60点満点中40点以上(法規) | 80点満点中55点以上(法規) |
3級の試験では、「電波法規」の問題が 4つ増えます。
内容も「 モールス符号」を理解する問題や、
「 通信憲章」など国際法に関する問題が出るようになります。
「無線工学」の問題も 2つ増えますが、出題分野は同じです。
かつての3級試験では、モールス信号を実際に受信し回答する「実技試験」も行われていました。しかし2005年の制度改正により廃止され、紙面による選択式の問題に変わっています。
講習会の形式や実施方法

ただ、4級を受けずに3級合格を目指す場合は、注意が必要です。
3級の講習会は、すでに4級を持っている人向けであることが多いからです。
資格の取り方 | 4級 | 3級 |
講習会 集合形式(現地) |
〇 | △ (4級を取得した方向け) |
講習会 e-ラーニング形式 |
〇 | 〇 |
独学→受験 | 〇 | 〇 |
※アマチュア無線が初めての人向けに、3級の講習会が開かれた例もあります( 平成28年)。
※「 e-ラーニング」形式の講習なら、いきなり3級を取得することも可能です。
インターネットを通じ、動画や問題によって勉強を進めます。
独学の場合に利用するテキスト
独学する場合は、3級と4級の取り組み方に大きな違いはありません。
市販のテキストを利用しましょう。
4級のおすすめ参考書
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基本的なところから理解したい人はこちら。
4級に加え、3級の範囲もカバーしているので、 3級に挑戦しようか迷っている場合も参考になります。
3級のおすすめ参考書
試験時に払う手数料
なお独学して国家試験を受ける際には、手数料の支払が必要となります。
4級では5,100円、3級では5,400円です(最新の情報はお調べください)
試験の受け方・運用開始までの流れ
試験の受け方や、運用開始までの流れは4級も3級も同じです。
講習会に参加して試験を受けるか、独学で対策して国家試験を受験し、
合格後に「無線従事者免許(従免)」を取得します。
従免を取得したら、①機材を揃え、②「無線局免許(局免)=コールサイン」の交付を受けて、無線運用を開始できます。
コールサインは世界で唯一、あなたの物です。世界中で通じます。ただし5年ごとの更新を忘れないでください。
次の記事で、4級の場合の具体的な流れを解説しています。
資格についてのその他の疑問
アマチュア無線の資格について、その他の気になるポイントをまとめました。
3級は4級を受けなくても受験できる?
いきなり3級の試験を受けることもできます。
ただし、3級の講習会はすでに4級を持っている人向けであることが多いので、申し込みの際には注意が必要です。
(→ 講習会の形式や実施方法)
免許を取ることができない人はいる?
試験や講習で認められれば、誰でも資格はとれます。
年齢制限もありません。
▼3級・4級では、小学校就学前の方が免許を取得した例もあります。
ただ、以下のような場合は免許を申請できないことがあります。
- 過去に重大な電波法違反がある
- 一定の精神疾患が確認されており、電波の誤使用が懸念されると判断された場合
- 他人の無線局を無許可で運用した履歴がある
これから無線の資格をとる方にはほぼ該当しないため、気にしなくても大丈夫です。
3級よりも上の資格はどんなもの?
アマチュア無線技士の資格には「2級」「1級」もあります。
経験者向けの資格であり、前の級の試験に合格していないと受験することができません。
3級を取得し、より高度な運用を試してみたくなったら目指してみましょう。
2級:200Wまでの送信出力が可能。
1級:1kWまでの送信出力が可能。全国的にも取得者は限られており、知識・技能ともに最上級。
まとめ
アマチュア無線技士3級・4級には、できることや試験内容に若干の違いがあります。
やりたいことに合わせて、受験する級を決めてみてください。
まず無線を始めたいなら:4級
まずは気軽にはじめてみたい。屋外でハンディ機やポータブル機、車からモービル機など手軽に楽しみたい。
モールス通信(CW)をやりたいなら:3級
国内の遠距離通信を目指すなら、CWが使える3級が第一歩です。
自分の興味やライフスタイルに合った級の免許を取得し、アマチュア無線を自由に楽しんでください。
ようこそ “キング・オブ・ホビー” の世界へ!